敏腕社長の密やかな溺愛
6.リハーサル
 二週間後。
 今日は記者会見のリハーサルだ。千明は和弘から指定された大会議室へと向かった。
 ノックをして扉を開けると、まだ準備している最中だった。
 斎藤や課長が司会者台のところで原稿をチェックしている。彼らは千明が来たのを見ると、顔をしかめてこちらに向かってきた。

「千明せんぱーい、何しに来たんですかあ?」
「小野さん、今日の司会は斎藤に決まっただろう。未練がましいぞ」

 千明が「ご招待いただいたので」と答えると、斎藤が鼻で笑った。

「その冗談、笑えませんよ。まさか、私から司会の仕事を奪う気ですか!?」

 斎藤が声を荒げると、その後ろから「あぁ、来てくれたんだねぇ」と優しい声がした。

 声の方向に目をやると、技術部長と和弘がこちらに向かって歩いてきていた。
 千明は深く頭を下げる。

「今日はお誘いいただきありがとうございます」
「全体の流れを見て、何か気づいたことがあったら遠慮なく言ってね」
「はいっ!」

 技術部長がにこやかに千明に微笑みかけると、斎藤と課長が息を呑んだ。

「そろそろ始めようか」

 和弘の一言で、会議室が緊張に包まれる。斎藤と課長も慌てて司会者台の方に戻っていった。
 記者会見に臨むのは、和弘と技術部長、品質部長、それに法務部長だ。

 千明は他の見学者とともに、端に立ってリハーサルを見守った。


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