敏腕社長の密やかな溺愛
7.記者会見
それからあっという間に記者会見当日がやってきた。セレノヴァホテルのコンベンションホールには多くのメディアが集まっていた。
舞台端から会場を見渡すと、緊張でドキドキと心臓がうるさく音を立てる。冷たくなっていく手を擦り合わせていると、後ろからポンと肩を叩かれた。
振り返ると、和弘が立っていた。
「緊張してる?」
「そりゃあ……」
「力は抜いて、思い切り良くな。ほら、カービングと一緒」
和弘が「そうだろ?」とイタズラっぽく笑うから、千明もつられて笑みを浮かべた。
「ふふふっ、そうですね。思い切り良くいきましょう」
開始時刻になって司会台に向かうと、会場のざわめきが静まっていく。千明は会場を見渡し、深呼吸をした。
(大丈夫……落ち着くのよ)
ゆっくり息を吐くと、だんだんと心臓の鼓動が落ち着いていく。
そっと胸に手を当てると、ジャケットに触れる。和弘からプレゼントされた日のことを思い出し、緊張で強ばっていた身体がほぐれていった。
和弘や部長たちが席に着いたのを見て、千明は背筋を伸ばした。
「思い切り良く、ね」
すると聞こえていないはずなのに、和弘が横目で千明を見て、小さくうなずく。千明はそれに応えるように、同じようにうなずいてからマイクのスイッチを入れた。
「皆さま、本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。 ただいまより、株式会社ルミナークによる記者会見を開始いたします。 本日の進行を務めさせていただきます、司会の小野でございます。どうぞよろしくお願いいたします」
そうして記者会見がスタートした。
「……以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。 ご多忙の中ご参加いただき、誠にありがとうございました」
マイクを切って前を向くと、マスコミ関係者がゾロゾロと退出していく。
(終わったー! なかなか興味を持ってもらえたんじゃないかしら。とにかく無事に進行できて良かったぁ)
皆を見送ると、想像以上に深いため息が出た。
「小野さん、良かったよ。急だったのにありがとうねぇ」
「こちらこそ、私を推薦してくださり、ありがとうございました」
技術部長たちと挨拶を交わしていると、和弘と目が合った。
「社長、お疲れ様でした」
「お疲れ。司会、すごく良かった」
和弘に微笑まれると、千明の心が跳ねる。
「ありがとうございます!」
千明が満面の笑みを浮かべると、和弘は少しだけ視線を逸らした。
「……この新システムは、長年の悲願だった。ようやく世に出せて本当に……」
和弘の声は小さく掠れていた。
千明は思わず彼の手を握ろうと手を伸ばしたが、寸前で引っ込めた。
(私ったら、今なにを……)
千明が自分自身の行動に戸惑っていると、和弘がパッとこちらを見た。先ほどの消えてしまいそうな雰囲気は消え、いつもの彼がそこにいた。
「この後は懇親会がある。楽しんでくれ」
舞台端から会場を見渡すと、緊張でドキドキと心臓がうるさく音を立てる。冷たくなっていく手を擦り合わせていると、後ろからポンと肩を叩かれた。
振り返ると、和弘が立っていた。
「緊張してる?」
「そりゃあ……」
「力は抜いて、思い切り良くな。ほら、カービングと一緒」
和弘が「そうだろ?」とイタズラっぽく笑うから、千明もつられて笑みを浮かべた。
「ふふふっ、そうですね。思い切り良くいきましょう」
開始時刻になって司会台に向かうと、会場のざわめきが静まっていく。千明は会場を見渡し、深呼吸をした。
(大丈夫……落ち着くのよ)
ゆっくり息を吐くと、だんだんと心臓の鼓動が落ち着いていく。
そっと胸に手を当てると、ジャケットに触れる。和弘からプレゼントされた日のことを思い出し、緊張で強ばっていた身体がほぐれていった。
和弘や部長たちが席に着いたのを見て、千明は背筋を伸ばした。
「思い切り良く、ね」
すると聞こえていないはずなのに、和弘が横目で千明を見て、小さくうなずく。千明はそれに応えるように、同じようにうなずいてからマイクのスイッチを入れた。
「皆さま、本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。 ただいまより、株式会社ルミナークによる記者会見を開始いたします。 本日の進行を務めさせていただきます、司会の小野でございます。どうぞよろしくお願いいたします」
そうして記者会見がスタートした。
「……以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。 ご多忙の中ご参加いただき、誠にありがとうございました」
マイクを切って前を向くと、マスコミ関係者がゾロゾロと退出していく。
(終わったー! なかなか興味を持ってもらえたんじゃないかしら。とにかく無事に進行できて良かったぁ)
皆を見送ると、想像以上に深いため息が出た。
「小野さん、良かったよ。急だったのにありがとうねぇ」
「こちらこそ、私を推薦してくださり、ありがとうございました」
技術部長たちと挨拶を交わしていると、和弘と目が合った。
「社長、お疲れ様でした」
「お疲れ。司会、すごく良かった」
和弘に微笑まれると、千明の心が跳ねる。
「ありがとうございます!」
千明が満面の笑みを浮かべると、和弘は少しだけ視線を逸らした。
「……この新システムは、長年の悲願だった。ようやく世に出せて本当に……」
和弘の声は小さく掠れていた。
千明は思わず彼の手を握ろうと手を伸ばしたが、寸前で引っ込めた。
(私ったら、今なにを……)
千明が自分自身の行動に戸惑っていると、和弘がパッとこちらを見た。先ほどの消えてしまいそうな雰囲気は消え、いつもの彼がそこにいた。
「この後は懇親会がある。楽しんでくれ」