敏腕社長の密やかな溺愛
街灯に照らされた道を二人並んで歩く。
時折車が通り過ぎる音だけが、やけに大きく聞こえた。
千明が隣を仰ぎ見ると、こちらを見ていた和弘と目が合った。
「あの……今日の記者会見、すごく良かったですね。大手メーカーにも入れてもらえそうですし、楽しみです」
「あぁ。今回のドライバーモニタリングシステムを世に出すことが、俺の長年の夢だった。このために立ち上げた会社と言っても過言じゃない」
「ふふふっ、和弘さんは、本当に安全が第一なんですね」
千明の言葉に和弘が足を止める。
そして横断歩道を指さした。
「昔、交通事故に遭いかけたことがある。ちょうどそこの横断歩道みたいなところだ」
「え?」
「俺はその時、前を見ていなかった。急に光が見えたと思ったら、後ろに身体が引っ張られて……気がついたら、俺を助けた人が目の前に倒れていた」
(嘘……まさか)
よく似た話を知っている。千明の身体はだんだんと冷たくなっていく。
和弘は意を決したような瞳で千明を見つめ、「それが君だったんだ」と口にした。
「君が意識を失っているのに、俺は無傷で呆然としていたんだ。何度も面会に行ったが、君は意識を取り戻すことはなかった」
「そう、だったんですね……」
「だから入社式で君を見かけた時、驚いた。苗字が変わっていたから、書類だけでは気づかなかったんだ。おそらく母も気づいていない。だから実家で会った時、正直戸惑った……。黙っていて本当に申し訳ない」
和弘に深く頭を下げられ、千明はそれをぼんやりと見つめていた。
「あの事故があったから、この会社を?」
千明が囁くようにそっと尋ねると、和弘は顔を上げてうなずいた。
「あぁ。安全システムに特化したくて、父の会社を継ぐのではなく社内ベンチャーを立ち上げたんだ。無我夢中でやっていたら、いつのまにか子会社化して社長になっていた。俺の代わりに怪我をした君への償いのつもりだった。……なんて、ただの偽善だな」
自嘲気味に笑う和弘を見ていると胸が痛くなる。千明は気づけば口を開いていた。
「偽善だなんて、そんなことないです。私はこの会社に救われたんですよ。私のような人も必要だって採用してくださったから」
ルミナークには感謝しかない。
千明は和弘の両手をそっと握る。彼の手も千明と同じくらい冷たくなっていた。
時折車が通り過ぎる音だけが、やけに大きく聞こえた。
千明が隣を仰ぎ見ると、こちらを見ていた和弘と目が合った。
「あの……今日の記者会見、すごく良かったですね。大手メーカーにも入れてもらえそうですし、楽しみです」
「あぁ。今回のドライバーモニタリングシステムを世に出すことが、俺の長年の夢だった。このために立ち上げた会社と言っても過言じゃない」
「ふふふっ、和弘さんは、本当に安全が第一なんですね」
千明の言葉に和弘が足を止める。
そして横断歩道を指さした。
「昔、交通事故に遭いかけたことがある。ちょうどそこの横断歩道みたいなところだ」
「え?」
「俺はその時、前を見ていなかった。急に光が見えたと思ったら、後ろに身体が引っ張られて……気がついたら、俺を助けた人が目の前に倒れていた」
(嘘……まさか)
よく似た話を知っている。千明の身体はだんだんと冷たくなっていく。
和弘は意を決したような瞳で千明を見つめ、「それが君だったんだ」と口にした。
「君が意識を失っているのに、俺は無傷で呆然としていたんだ。何度も面会に行ったが、君は意識を取り戻すことはなかった」
「そう、だったんですね……」
「だから入社式で君を見かけた時、驚いた。苗字が変わっていたから、書類だけでは気づかなかったんだ。おそらく母も気づいていない。だから実家で会った時、正直戸惑った……。黙っていて本当に申し訳ない」
和弘に深く頭を下げられ、千明はそれをぼんやりと見つめていた。
「あの事故があったから、この会社を?」
千明が囁くようにそっと尋ねると、和弘は顔を上げてうなずいた。
「あぁ。安全システムに特化したくて、父の会社を継ぐのではなく社内ベンチャーを立ち上げたんだ。無我夢中でやっていたら、いつのまにか子会社化して社長になっていた。俺の代わりに怪我をした君への償いのつもりだった。……なんて、ただの偽善だな」
自嘲気味に笑う和弘を見ていると胸が痛くなる。千明は気づけば口を開いていた。
「偽善だなんて、そんなことないです。私はこの会社に救われたんですよ。私のような人も必要だって採用してくださったから」
ルミナークには感謝しかない。
千明は和弘の両手をそっと握る。彼の手も千明と同じくらい冷たくなっていた。