敏腕社長の密やかな溺愛
 残りの大学生活は、事故のこと、身体のこと、全てを隠してひっそりと過ごした。
 アクティブな友人たちは離れていったが、そのおかげでベジタブルカービングにも出会えた。
 それで良かった。

 ただ、就職活動ではそれらを隠すわけにはいかなかった。

 仕事で会社に迷惑をかけるわけにはいかない。だから、千明は仕方なく最初から全てを打ち明けて就活に臨んだ。
 多くの企業が面倒くさそうに対応してくる中、『株式会社ルミナーク』だけは好意的に対応してくれた。ルミナークは車の安全システムを手掛ける会社だ。大手自動車メーカー『オウサカ』の子会社ということもあり、待遇も良く業績も安定していた。

『交通事故を減らすための会社ですから、貴女のような人が必要です』

 とまで言ってもらったのが決め手となって、この会社で働き始めたのだ。
 総務に配属され事務仕事がメインだったが、それが良かった。身体のことで誰かに迷惑をかけることもないし、課内の皆はとても親切だった。
 何より、安全のための会社の一員であることが嬉しかった。

(それなのに……)

 それなのに、今年から急に広報に異動になったのだ。理由を聞いたが、総務の課長からは歯切れの悪い回答しか返ってこなかった。

(なぜ私が『社内随一のアクティブ集団』に配属されたんだか……あーぁ)


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