敏腕社長の密やかな溺愛
3.社長
土曜日。
ベジタブルカービングの教室の日だ。
最近は生徒が春子一人だけのことも多いが、もともと趣味の延長で始めたことなので、生徒の数は気にしていなかった。
「先生、ちょっとここ難しいわ。すぐに切れてしまうの」
「そうですね……じゃあ半分まで切り込みを入れたら、反対側からこうやって切ってみるのはどうですか?」
「あぁ! こっちの方が出来そうだわ」
誰かに教えることで新しい気づきもある。
一人でもくもくとカービングをするのも好きだが、こうして誰かと話ながらするのも大好きだった。
(春子さん、最初の頃は料理もしたことがないって言っていたけれど、ずいぶんと上達したな)
教室を始めてすぐに入会してくれた春子とは、もう長い付き合いだ。
千明の母くらいの歳だけれど、友人のような関係になっていた。
「これが完成したら、今日はおわりにしましょうか」
片付けを始めると、春子が少し言いにくそうに口を開いた。
「先生、ちょっといいかしら?」
「なんですか?」
「今度の土曜日、夫の誕生日なの。だからお祝いのお料理と一緒にカービング作品を並べたいんだけど……」
「素敵です! ご主人は花や可愛いものがお好きなんでしたよね? きっと喜んでもらえますよ。来週はお休みにしましょうね」
千明の提案に、春子は首を横に振った。そして意を決したように春子の手を握ったのだ。
「先生に準備を手伝ってほしいの。もちろんお代はお支払するわ!」
「えぇ!? か、構いませんけど……」
真剣な眼差しで頼まれては断れない。どうせ生徒が春子だけなら、教える場所が変わるだけだ。
そう思っていた――。
そうして招かれた逢坂家で、千明は社長の和弘と会ったのだった。
ベジタブルカービングの教室の日だ。
最近は生徒が春子一人だけのことも多いが、もともと趣味の延長で始めたことなので、生徒の数は気にしていなかった。
「先生、ちょっとここ難しいわ。すぐに切れてしまうの」
「そうですね……じゃあ半分まで切り込みを入れたら、反対側からこうやって切ってみるのはどうですか?」
「あぁ! こっちの方が出来そうだわ」
誰かに教えることで新しい気づきもある。
一人でもくもくとカービングをするのも好きだが、こうして誰かと話ながらするのも大好きだった。
(春子さん、最初の頃は料理もしたことがないって言っていたけれど、ずいぶんと上達したな)
教室を始めてすぐに入会してくれた春子とは、もう長い付き合いだ。
千明の母くらいの歳だけれど、友人のような関係になっていた。
「これが完成したら、今日はおわりにしましょうか」
片付けを始めると、春子が少し言いにくそうに口を開いた。
「先生、ちょっといいかしら?」
「なんですか?」
「今度の土曜日、夫の誕生日なの。だからお祝いのお料理と一緒にカービング作品を並べたいんだけど……」
「素敵です! ご主人は花や可愛いものがお好きなんでしたよね? きっと喜んでもらえますよ。来週はお休みにしましょうね」
千明の提案に、春子は首を横に振った。そして意を決したように春子の手を握ったのだ。
「先生に準備を手伝ってほしいの。もちろんお代はお支払するわ!」
「えぇ!? か、構いませんけど……」
真剣な眼差しで頼まれては断れない。どうせ生徒が春子だけなら、教える場所が変わるだけだ。
そう思っていた――。
そうして招かれた逢坂家で、千明は社長の和弘と会ったのだった。