運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「私もそうやって呼びたいですわっ」

 リディアは勢いよくクラリスの方へ顔を向けると、まるで挑むように、ドレスのすそをつまんで頭をさげる。

「お久しぶりでございますわ、クラリス公爵令嬢。メルン伯爵家のリディア・メルンです。私、セレナさんとは良きお友だちですの」
「存じています。私も、セレナとは仲良くしているんです。長く王都にご滞在と聞いておりますけれど、セレナのそばには私がおりますから、安心してメルンへお戻りになっても大丈夫ですよ」

 セレナはヒュッと息を飲む。またしても、クラリスは無神経なことを言ってると気づかずに、むしろ、控えめににこりと微笑んでいる。

 しかも、こういうときは驚くほどに流暢らしい。交戦的と受け取られてもふしぎじゃない。ちらりとリディアを盗み見れば、やはり、彼女はムッとした様子だが、さすがに公爵令嬢にかみついたりはしない。

「あのー、セレナ、何をしていましたの? 私にも教えてください」

 クラリスは辺りをきょろきょろと見回す。

「あっ、はい。えっと、……リディアさん、いい?」

 顔色をうかがうが、心配ないようだ。リディアは、ふんっと言いながらも、胸を張る。

「かまいませんことよ。仲間に入れて差し上げますわ。ですが、私もセレナと呼びたいですわよ」
「あ、大丈夫よ。そうしましょう」
「本当ですの? うれしいですわ、セレナ」

 腕に抱きついてくるリディアの横で、クラリスは机の上に広げた本を興味津々な様子でのぞき込んでいる。

「古代語の本を読んでいるんですか? レオン様から、セレナはとても優秀だと聞いておりましたけれども」
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