運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 ちらりと頭の中にリチャードのいやらしい顔が浮かぶ。婚約が発表されれば、我が娘を王太子妃にと願うアードラー家は必ず動くだろう。

「かまわない。俺たちの結婚が気に入らない者は、たとえ、セレナが公爵家の娘であっても、手段を選ばずに糾弾してくるだろう。それよりも、大事なことは」

 アレクはセレナの長い髪を耳にそっとかけ、ほおが触れ合いそうになるほど顔を近づける。

「おまえを見ていると、不思議と心がたかぶる。何があっても、結婚相手はセレナ以外に考えられないんだ」

 まっすぐな思いに驚いて、セレナはアレクと見つめ合った。そうしていると、その気持ちがわかるような気がする。名もない野花がさりげなく咲くような控えめさで、心が喜びに震え、癒しを感じている。

 身分も生い立ちも関係ない。ふたりをはばむものはもう何もないとさえ思える。彼にとってはイザベラ以外、どんな困難もささいなことなのだろう。

 そうだ。まだ彼に聞かないといけないことがある。呪いの刻印。あれは本当にあるのか。

「あの、アレクシス殿下、実は聞きたいことがあって……」
「アレク」
「はい?」
「これからはアレクと呼べ」

 否と言わせない雰囲気に、セレナは戸惑いを飲み込んだ。

「……じゃあ、アレク。私、アレクに見せてもらいたいものがあって」
「なんだ、それは」
「えっと……、ここでお願いしていいのか……」

 そわそわと辺りを見回してしまうと、何を誤解したのか、やけに艶めいた目をしたアレクが、そっと手を重ねてくる。

「そんなに改まって頼むくらいなら……俺の部屋で聞こうか?」
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