運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 首をひねったとき、不意打ちするように扉が開く。

 思わず、叫びそうになる声を飲み込んだ。中年のメイドが、「お待たせいたしました。どうぞ、中へお入りください」と頭を下げる。

「あ、ありがとう」

 反射的にセレナは答えると、寝室の中へと進み入る。後ろで扉が閉まる音がして、振り返ると、メイドの姿はない。どうやら、出ていってしまったらしい。アレクから人ばらいの指示を受けているのだろう。

 セレナは室内をゆっくりと見回す。天蓋の上がったベッドの上にアレクの姿はなく、さらに中ほどへと進むと、本が山積みになったオークの樹でできた机の奥に、彼を見つけた。

 彼は身体をすっぽりと包み込むような大きな椅子にもたれ、両腕を組んで目を閉じていた。

 寝ているのだろうか。考えごとをしていてそのまま……のように見える。

「アレク……」

 近づいて、そっと声をかけてみるが、まったく起きる気配がない。これでは、メイドも困っただろう。どうりで待たされたわけだ。

 セレナは少し考え込む。

 これは……チャンスかもしれない。

 アレクの顔をのぞき込む。しっかりとまぶたは閉じていて、いまだに深い眠りについている。

「ちょっとだけなら、いいよね……?」

 セレナはそっと彼のあごに触れてみた。薄く開いた口の中を見てみようと目を凝らした瞬間、グッと手首をつかまれ、息を飲む。

「アレク……」

 寝起きとは思えないほど、しっかりと目を見開いた彼が、こちらを凝視している。

 まずい。どうしよう。絶対、怒ってる……。

「あ、あの……これは、その……」
「何をたくらんでるのかと様子を見ていたが……、驚いたぞ」
「お、起きてたんですかっ?」
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