運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「残念だが、熟睡することはないのでな」

 アレクは軽く笑いながら言った。

 それって……、いつでも命を狙われる立場だからってことよね。

「ごめんなさい……」
「おまえは俺を楽しませてくれるのだから、謝る必要はない。それより、何をしようとした?」

 セレナはひょいと彼のひざの上に抱き上げられた。腰にまわる腕は、落ちないようにしっかりと支えているのに優しくて、完敗を突きつけられたような気分になる。

「あの……見たかったんです」
「何を?」
「そのぅ、うわさを聞いて」

 クラリスから聞いたと話して大丈夫だろうか。彼女はなぜ話したのかと問い詰められても気にしない性格だろうけど。

 でも、アレクはもしかしたら、あざのことを知られたくないと思ってるかもしれない。まして、それがうわさとして広まっていると知れば、傷つくかもしれない。言わなければよかった、と胸がざわついた。

「うわさを気にしていたらキリがないだろう。だが、まあ、口の中を見ようとしたなら、察するものはある」
「きょ、興味本位じゃないんです。私はただ、アレクが呪われてるならなんとかしなきゃって」

 彼は愉快そうに目尻をさげる。

「見たいのか?」
「あるんですか?」
「ある。……わざわざ見せるものでもないんだが」

 アレクは息を吐き、ためらいもなく舌を突き出した。その中央に、黒い鳥籠と小さな鳥の刻印があった。まるで、生きているかのようにわずかに脈打っている。

 目を離せないほど、静かで禍々しい印。セレナはぶるりと震え、息を飲む。

「……これが、呪いだ。俺は未来永劫、イザベラに呪われ続ける……この印がある限り」
「アレク……」
「だが、苦しんだのは俺じゃなく、婚約者たちだ。おかしいとは思わないか?」
「婚約がダメになって苦しんでるじゃないですか」

 まったく理解できないというように、アレクは肩をすくめた。
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