運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 無遠慮に尋ねたにもかかわらず、アレクは気を害した様子もなく教えてくれる。

「じゃあ、イザベラの鏡は?」
「見たことはないな」
「塔にあると聞きましたけど」
「ああ。結界塔と同じく、教皇に仕える司祭たちが管理する塔があるんだ」
「もしかして、結界塔の隣にあった?」

 あの場所には、結界塔の半分くらいの高さの塔がもう一つ建っていた。

「よく覚えているな。そう、あれが鏡の塔だ」

 感心するような息をついて、アレクはうなずく。

「じゃあ、アドリアさんはあそこで倒れていたんですね……」

 鏡の塔は薄暗く、使われていない建物のように見えた。あの場所へ一人で出かけていく勇気はどれほどのものだっただろう。

「だからおかしい」

 彼は苦々しい顔つきで、腕を組む。

「おかしい……って?」
「あれは俺すら近づけない塔だ。なぜアドリアが行けたのか」
「どういうことですか?」
「……アドリアは別のところで殺され、あの塔に運ばれたんじゃないかと思っている」

 セレナはごくりとつばを飲み込む。

 苦渋に満ちたアレクの表情の中には、できることならセレナを巻き込みたくなかったという気持ちが見え隠れしていた。

 しかし、信頼してくれているからこそ話してくれたのだろう。セレナは踏み込んで尋ねた。

「それができる人は限られてますか?」
「不審に思われずに近づけるとすれば、司祭だろう。あるいは、見張りの兵士。だが……」

 アレクは言いよどんだ。短い沈黙が、朝の空気に冷たい緊張感を走らせる。セレナは思わず手を握りしめた。

「何か気になることが?」
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