運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 自分でそう口にしたものの、セレナはある可能性に気づいて息をのむ。

「……そうよ。インクが手に入らなかったんだわ。インクのない環境で、それでも誰かがこれを残そうとした」
「いったい、いつ誰が何を書いたのでしょう?」

 セレナは辺りを見まわし、机の上のランプに目を止める。

「読んでみればわかるわ。エマ、ろうそくに火をつけてくれる?」
「まだ日は高いですが、つけるのですか?」
「あぶるのよ。そっと温めれば、きっとうまくいくわ」

 ふしぎそうにするものの、エマは手際よくランプをつけてくれた。セレナは羊皮紙の両端をそっと持ち、表面をろうそくの火の上に運ぶ。

 羊皮紙をゆっくりと左右に揺らしてあぶる。すると、油の焼けるようなかすかな匂いがして、うっすらと文字が浮かび上がってくる。

「すごいですわ、セレナ様。殿下がお見そめになられたお方は違いますっ!」
「大げさよ」

 あきれて笑うが、エマは目をキラキラさせている。心配そうに見守っていたメイドたちも、まるで特別なものを見るような目でこちらを見つめてくる。

「まあ、この程度のことは大したことないんです」

 セレナが胸を張ると、エマが興味津々に尋ねてくる。

「何が書かれているのでしょう?」
「ちょっと待って。……これは、ルミナリア語で書かれたものね。えっと……、我はルミナリアの王族なり。逃げ込んだ地下牢でこの手紙を……」

 セレナは文面を読み上げながら、次第に険しい顔つきになった。

_______

我はルミナリアの王族なり。

イザベラの裏切りにより、魔物が王宮を侵略し、我は逃げ込んだ地下牢でこの手紙を書いている。

頭上では地響きがし、天井からはパラパラと石が降ってくる。我はまだ死ぬわけにはいかない。

イザベラを許すわけにはいかない。



あれから三日が過ぎた。
少し頭上が静かになった。
兵士がやってきた。
イザベラはエリアスによってほこらに封じられたと。
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