運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい



 着替えを済ませ、部屋を出ると、王太子一行の出陣を知らせる鐘の音が響いた。

 夜明けの名残をとどめた空は、青と白が淡く混じり合っている。それはセレナの胸の内と同じく、張り詰めた不安と期待がない交ぜになったような色でもあった。

「セレナ様、こちらへ。使用人の通用口に馬車を用意してございます」

 外套をまとうエマが促す。セレナはうなずいて、彼女のあとについていく。

 アレクの出立で沸く宮殿内では、見送りに出る使用人たちは皆、浮き足立っていた。おかげでセレナたちは誰からも不審がられることなく、通用口へと到着した。

「あちらです」

 エマが前方を指差す。

 そこには、濃紺の外装に、窓枠だけ銀の縁取りが施された上品な馬車があった。王家の紋章は外してあるが、質の良い革張りの座席には、乗る者の身分を隠しきれない立派さがある。

「殿下の目をごまかすには、少し上等すぎましたでしょうか?」

 エマはほんの少し不安そうに言う。セレナのために、なるべく頑丈な馬車を用意したかったのだろう。

「……でも、これならメルンまで行けそうだわ」
「はい。旅支度は整っています。ご安心ください」
「本当に、エマ、あなたも行くの?」
「私はセレナ様にお仕えしていますから」

 覚悟を決めた彼女の目を見て、うなずき合う。セレナが馬車の扉に手をかけようとしたそのとき、明るく快活な声がした。

「どこへ行くつもりですか、セレナさん」

 ひょっこりと御者席から茶髪の青年が顔を出す。テオだった。

「て、テオさん?」

 どうしてここに? アレクと一緒に出発したのでは……。
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