運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「……あれは、国を治めるときの顔ではありません。まるで少年のように穏やかで、どこか安堵しておられる。あなたがそばにいるときだけ、あの方は戦わなくていい時間を得られるのです」

 セレナの喉が詰まった。戦うのは、何も魔物だけじゃない。アレクはさまざまな権力や不条理と戦っている。その言葉は、まるで胸の奥の迷いをそっとすくい取るように響く。

「……私、アレクの力になれるのかな」
「もうなっていますよ」

 テオはまっすぐに前を見たまま、そう言った。その瞬間、馬が突然いななき、空気がざわめく。

「何っ?」
「セレナさんっ、伏せてっ!」

 テオが叫び、手綱を引く。わけもわからず、頭をかかえてしゃがもうとした瞬間、まばゆい光の粒が窓枠に降り注ぐ──

「あれは……なにっ?」

 空の高みから落ちてくる小さな黒い点……。それはやがて、まばゆい白の翼を持つ巨大な獣となって、ゆっくりと地上へ降り立つ。

 次の瞬間、地鳴りのような風圧が襲い、馬車が大きく揺れる。セレナは思わず窓枠にしがみつき、片目をあけた。

 翼が一度はためくたびに、金色の粉が辺りに舞う。その獣の姿は、恐ろしいほど神々しく、美しかった。

 御者席から飛び降り、剣を抜いたテオの前で、獣は静かにセレナの方へと首を垂れる。

「あなたをずっと探してた……」
「え……、しゃべった?」

 セレナはテオと顔を見合わせる。彼も驚いている。間違いない。今の少年のような高い声は馬の姿をし、角と翼の生えた……そう、まるでユニコーンのような姿をした獣が発したものだったのだ。
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