運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 テオの目には、どうしようもない焦りと不安がにじんでいる。その姿もすぐに光に溶けて、視界のすべてが白に染まる。

 そして──、無音の世界が広がった。

 そこは、夢とも現実ともつかない静謐な場所だった。

 足元には水面のように揺らいで見える床が広がっている。両端には白い石柱が並び、その奥には金の装飾が施された大扉が見えた。

「ここが……天穹聖域?」

 セレナのつぶやきに、返事はない。テオはもちろん、ユニコーンに似た獣の姿もない。

「どこ行っちゃったのかしら」

 きょろきょろしながら進む。

 大扉の前に、白衣の司祭たちが並んでいる。結界塔を守る司祭と同じく、彼らの存在はどこか無機質だった。

 そのうちのひとりが前に進み出て、静かに一礼すると、扉がスーッと開く。

 目の前に広がるのは、礼拝堂のような場所だった。天井は高く、ガラス窓がはめ込まれた壁面からはまばゆいほどの光が降り注いでいる。

「ようこそ、天穹宮へ」

 中央に置かれた祭壇のそばで、豪華な装飾が施された白衣をまとう一人の青年が静かに立っていた。

 その肩には、小さな生き物が乗っている。精霊……だろうか。羽のある、丸っこくてかわいらしい獣のように見える。

「あの、私は……セレナと言います。……あなたは?」
「セレナ……」

 髪の長い青年は小さくつぶやくと、目を細める。

「私はライナス3世。この天穹宮を治める者です」

 ライナス3世……って、第7代教皇よね? こんなに若い青年だったなんて。

 驚いているうちに、ライナスの肩に乗る獣がふわりと飛んで、セレナの周りをぐるぐると舞う。

「僕はルーガだよ。さっきはごめん。あの人は無事だよ」
「あの人って……テオさん? じゃあ……、ま、待って。……もしかして、あなたはさっきのユニコーン?」
「ユニコーン?」
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