運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 小さな獣は首をひねるが、そんなことはどうでも良さそうに、うれしげに飛ぶ。

「僕ね、イザベラを教皇さまに会わせたくて仕方なかったんだよ」

 ぽかんと、宙を舞うルーガを眺めていると、ライナスがくすりと笑う。

「ルーガは天穹聖域の精霊です。普段は地上に降りることはほとんどないのですが、イザベラの気配を感じると言って飛び出してしまい、驚かせましたね」
「は、はい。ちょっと戸惑ってます……。それより、教皇様……あっ、教皇猊下、私はイザベラではなくて……」

 うまく説明できる気がしなくて言葉を濁すが、ライナスはゆっくりとうなずく。

「イザベラのほこらで目覚めた娘が『セレナ』と名乗っていると、すでに知らせを受けています。あなたが眠りに落ちてから、あろうことか、二千年もの月日が過ぎました。当時を知る教皇ライナス1世を始めとするルミナリアの王族はもういないのです。恐れず、イザベラを名乗ってもいいのですよ」
「あの……、何か誤解しています。私は恐れているのではなくて、セレナとして生まれたんです」
「そして、イザベラに生まれ変わった」
「え……」
「ライナス1世の封印により、イザベラは深き眠りにつきました。エリアスがふたたび、現れる日を願って」

 セレナはごくりとつばを飲み込み、黙ってライナスの話に耳を傾けた。

「しかし、エリアスが亡くなるとともに、イザベラの気配が消えたのです。ルーガは大陸中をくまなく探しましたが、ついぞ見つかることはありませんでした」
「イザベラは……死んだんですか?」
「それを知るものはおりません。しかし、つい最近、イザベラが還ってきたとルーガが言うのです。エリアスの生まれ変わりであるアレクシス殿がほこらの封印を解いたからだと」

 教皇はどこか慈しむように目を細めた。
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