運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「ふたたび目覚めたイザベラ……」
「そう。あなたは、まごうことなきイザベラなのですよ」

 教皇の言葉に、セレナの胸は締めつけられる。

「……違います。私はイザベラだったかもしれないけど、今はセレナなんです」

 アレクだってそう。彼はかつてエリアスだったかもしれないけれど、今はアレク。そして、アレクが好きになってくれたのは、セレナである私なのだ。

 もし、私がエリアスを憎むイザベラとして目覚めたというなら、アレクに惹かれるはずがない。……でも待って。何かが引っかかる。

 ──渡さない。

 低く、耳の奥で声が響く。

 忘れていた。

 アレクの婚約者たちをおびえさせた黒い影……あれは、イザベラの影だと教えてくれたのは、クラリスだったか。

 なぜ、イザベラはアレクを婚約者たちに渡さないだなんて言ったの……?

「あなたがそれを信じているなら、それもまた真実でしょう。さて、少々問題が起きています。詳しい話は後ほどにしましょう」

 セレナの思考を、ライナスが奪う。

「問題って、何かあったんですか?」
「ルーガがイザベラを……いえ、セレナを勝手に連れてきてしまいましたからね」

 教皇は困り顔をすると、祭壇の中央へ歩み寄る。そこには、透き通った水晶玉が置かれていた。玉の表面には、内側から湧き出るような淡い光が、水面の波紋のように静かに揺らめいている。

「これは?」
「アルナリア全土を映す水鏡です。──見てごらんなさい」
< 156 / 177 >

この作品をシェア

pagetop