運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 セレナが水鏡に目を向けた瞬間、光の霧が晴れ、アレクの姿が玉の中にくっきりと浮かんだ。

『セレナーッ!』

 彼は空に向かって叫んでいた。額には汗がにじみ、激しく怒り、腕をつかんでいるテオを振り切ろうとしていた。その後ろには、思案げなオリオンの姿もあった。

 いま、見せられているこの光景が真実ならば、テオはアレクと合流できたということだ。

「私……、アレクに会いに行かなきゃ」

 思わず、手を伸ばした。けれど、指先が水鏡に触れた瞬間、透明な膜のようなものが弾けた。その先へは行けない。まるで、別の世界に隔てられているみたいに拒まれた。

 テオに何かを言われ、アレクは動きをとめると、全身を震わせて喚き声をあげた。そのとき、震えたルーガが肩にしがみついてくる。

「どうして……怒ってるの?」

 ルーガが小さく身をすくめると、ライナスは痛ましげな目をする。

「アレクシス殿は、セレナが魔物にさらわれたと思っています」
「ちがうよ。ちがうのに……」

 悲しそうにつぶやくルーガが、ライナスの周囲を落ち着きなく飛び回る。その姿がいたたまれず、セレナはライナスに歩み寄る。

「どうか……アレクに伝えてくださいっ。私は無事だって」

 その声で、まるで決意を得たように、ルーガはピンと羽を伸ばした。

「僕、行ってくるよ」

 小さな体が水鏡に飛び込む。

「待って、ルーガ。行くって?」
「すぐに、会えるよ」
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