運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 天穹宮の奥にあるその部屋は、祭壇とは異なる静寂に包まれていた。

 セレナとアレクが椅子に腰を下ろすと、ルーガがそっとライナスの肩から飛び降り、光を散らして宙に舞う。楽しげなルーガと対極的に、ライナスは厳かに口火を切る。

「二千年前、なぜルミナリアが滅んだのか、話をしなければなりませんね」

 ライナスの声は、室内に染み渡るように響く。アレクとセレナが身を正すと、彼は淡い水色の瞳でふたりを見つめた。

「現在のべナール地方には、ルミナリア時代、べナールという伯爵家がありました。多くの聖女を輩出し、ルミナリアを邪悪な魔物から守り続ける誉れ高き名門家です。しかし、その末娘──イザベラは、あろうことか、闇の力を有して生まれたのです」

 ヒュッとセレナの喉がかすかに鳴る。

 セレナ・べナール。アレクがそう名付けたのは、ただの偶然ではなかった。最初から彼は、ほこらで出会ったセレナがイザベラだと疑っていた。だから、その名がふさわしいと思ってくれたのだろうか。

 セレナはちらりとアレクの様子をうかがう。彼はまっすぐ前を向き、微動だにしない。しかし、セレナの視線に気づくと、安心させようとしたのか、穏やかな目で小さくうなずいた。

「これは、アレクシス殿もご存知の話でしょう。さて、ここからはルーガしか知らない、どこにも記されていない話をしましょう」

 ライナスが言うと、ルーガが出番だとばかりに、意気揚々とセレナの肩へと飛び乗った。

「僕、話すよ。イザベラは、悪くないよ」
「ルーガ、まあ、待ちなさい」

 ライナスは片手をあげたあと、さらに続けた。
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