運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「べナール伯爵は、イザベラの存在をひた隠しにしました。闇の魔力を忌む風潮は今よりもずっと強く、伯爵は受け入れられなかったのでしょう。……イザベラは決して外に出ることは許されず、屋敷の奥に閉じ込められて育てられたのです」
「そんな……」

 思わずセレナが声をもらすと、アレクがライナスに尋ねた。

「それがどうして、イザベラはルミナリアの発展に協力することに?」
「王族の耳にうわさが届いてしまったのですよ。いくら隠しても、べナール家の娘たちは美しく、貴族たちの話題にならないはずがなかった。そして、ルミナリアの王は、闇の力さえも国力となると考え、イザベラを王宮に招いたのです」
「そのとき、イザベラは……いくつでしたか?」

 闇の力を有し、孤独に生きてきた娘がひとり、王宮へ向かう。どれほど心細かっただろうと思うと、セレナは尋ねずにはいられなかった。

「十を数えるころだったでしょう。そこで、イザベラはルーガと出会いました。当時のルミナリアでは、精霊たちが地上で自由に暮らしていましたから」

 ルーガはセレナの目の前に降り立つと、パタパタと羽を振る。

「うん。初めてのお友達は、イザベラだよ。あの子は笑うとすごく綺麗なんだぁ。僕、いつも側にいたんだよ」

 ルーガはうれしそうにセレナの顔をのぞき込む。まるで、そこに二千年前のイザベラを見つけたみたいに。

「精霊を味方につけるイザベラに、王族はますます期待しました。各地に現れる魔物の討伐、魔力による隣国への圧力、闇の力を恐れる貴族たちの反乱をも抑え込み、ルミナリア王はその地位を盤石なものにしました」
「イザベラは信じていたんですよね? 王を」

 正しいと信じて──

 彼女はずっとそうして、国のために力を尽くした。
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