運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「僕、あのとき、イザベラを教皇さまのところへ連れていけばよかったんだ。そうしたら、あんなことにはならなかった……。セレナ、あなたはここにいるべきだよ」

 ぴたりと、ルーガはセレナの胸に飛び込んでくっついた。そっと抱きしめ、優しく背中をなでると、小さな体は次第に落ち着いていく。

「王はエリアスが力を持つことを恐れ、反逆者と決めつけました。イザベラもまた、王家への協力を拒むようになり、そして、その日が来ました。王はエリアスを処刑することにしたのです」

 ライナスの声は淡々としていたが、セレナはぶるりと震えた。

 伝え聞いていたものと話がまったく違う。

 ルミナリアの王族が残した記録は、すべて保身のために捏造されたものなのだ。災厄の魔女という悪名を流布されたイザベラの嘆きはどれほどのものだっただろう。

「イザベラはそのとき、初めて怒りを見せました。闇の炎が彼女を包み込み、力が暴走したのです。各地の魔物は暴れ出し、闇の力に導かれて王都に向かいました」

 続々と集う魔物の群。王都は混乱し、すさまじい争いが起きただろう。

「由々しき事態をいさめるべく、ライナス1世は軍を率いて立ち上がりました。エリアスの無罪を認め、彼とともにイザベラを助けようとしたのです」

 王都で暴れる魔物は、ルミナリアの王族ばかりを狙った。イザベラを捕らえようとする王族と教皇軍の戦いに加え、荒れ狂う魔物たちとの戦いは、想像を絶するほどの惨事だった。

 ライナスの口から語られる真実に、セレナは息をするのも忘れた。

 イザベラはただ、生まれて初めてできた愛する人と幸せになりたかっただけのはずなのに。

「イザベラの暴走を止めるのは簡単ではありませんでした。いえ、実際には止めることができず、イザベラの怒りを鏡に封じ込めるのがやっとでした」
「鏡……ですか?」
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