運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 ようやく、セレナははっと息を吐き出した。

「イザベラの鏡か」

 アレクがつぶやくと、ライナスははっきりとうなずいた。

「あの鏡には、イザベラの怨念が封じられています」
「怨念か……、なるほど」

 皮肉げに唇をあげるアレクもそれに気付いたようだ。

 なぜ、アレクの婚約者たちに対し、イザベラが嫌がらせをしてきたのか。

「ではなぜ、イザベラをほこらに封じたのですか。怨念を封じ、暴走は収まったのでは?」

 アレクが冷静に尋ねる。

「そのときにはすでに、イザベラだけの問題では収まりきらない事態になっていたのですよ。イザベラが王都へ魔物を呼び寄せた。そんなうわさが吹聴され、イザベラは憎むべき存在になっていました」
「そのうわさの出どころは言うまでもないな。どこまでも、ルミナリアの王族とやらは汚い真似をする」

 アレクがテーブルの上でこぶしを握る。

 その姿をライナスは痛ましげに見つめるが、彼は常に平等なのだろう。事実だけをふたたび、淡々と語り始める。

「エリアスはイザベラを連れて王都を逃げ出しました。しかし、アルヴェインの森で追っ手につかまり、イザベラはふたたび、王のもとへ連れ戻されそうになったのです」
「王はイザベラを諦めていなかったんですね」
「エリアスが力を得ることを恐れた……と言った方が正しいかもしれません」
「だから、エリアスは決断した?」

 ライナスはセレナからアレクへと静かな眼差しをずらす。

「封じることで、イザベラを守ろうとしました」
「イザベラは?」
「彼女は悲しみました。しかし、自分が生きている限り、エリアスは罪人として王族に追われる。現世では結ばれない運命を受け入れたのです。……失意の中、彼女はエリアスと約束しました。ふたたび、巡り逢おうと」
「約束? 呪いをかけたのでは?」
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