運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい



 気づけば、王宮の入り口に立っていた。ライナスが魔力で一瞬にして転移させたのだろう。テオとも合流し、セレナはアレクたちと赤く染まる西の空へ向かって走った。

 混乱する使用人たちを避難させる兵士たちの隙間を縫って向かった先に、まるで憎悪の炎に包まれたかのような、真っ赤に燃え盛る塔があった。

「鏡の……塔が……」

 セレナは息を飲み、アレクの着衣のすそをぎゅっと握りしめた。

 激しい魔力のぶつかり合いがあったのだろう。荒れ狂う熱気がジリジリと肌を刺す中、司祭たちは延焼が広がらないようにシールドを張り、真っ黒なローブに身を包む数人の魔術師たちが広場に倒れ、兵士たちに縛り上げられている。

 何者かの侵入があったのだ。イザベラの鏡は燃え尽きてしまっただろうか。確認しようにも、これ以上、近づくのは危険だ。

「離せっ。私を誰だと思っているっ!」

 騒がしい声に気づいて、セレナが振り返ると、そこには、兵士に後ろ手をつかまれた中年の男が立っていた。

 抵抗して身をよじる男は、深紅のベルベットで仕立てられた、威厳のある上着を身につけている。

 知らない男だ。けれど、どこかで会ったことがあるような既視感を覚えた。

 いったい、どこで……?

 思い出そうと頭を巡らした瞬間、セレナの横髪が風に揺れた。急にアレクが男へ向かって走り出したのだ。

「やはり、おまえかっ。セドリック・アードラー!」

 アレクは叫びながら、男の胸ぐらをつかんだ。

 セドリック・アードラー?
 アードラーって、もしかして……。

 セレナはあわててアレクを追いかけようとしたが、横から伸びてきた腕にそれは阻まれた。

「行ってはいけません」

 厳しく断じるのは、テオだった。
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