運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「あの娘には野心があった。王太子妃となり、イザベラの力を得て、王となるあなたよりも強い実権を握ろうと画策していたんですよ。あなたは感謝こそすれ……」
「黙れ、貴様っ!」

 アレクが剣を抜くより早く、アードラーは毛布をはぎ取り、鏡を両手で突き上げた。

 セレナはアッと声にならない声をあげた。

 降り注ぐ日の光が鏡に吸収されていく。まるで、二千年もの長い年月、暗い塔の中に押し込められ、光に飢えていたかのようだ。

「セレナッ! さがれっ!」

 アレクが叫んだ瞬間、鏡から光が吹き出す。それは明るい日差しのようではなく、闇のように深い黒紫の禍々しい光だった。

「エリアス……」

 鏡から、女の細い声が漏れ聞こえてくる。

「ああ、見よ。イザベラは本当にいたのだ。我がアードラー家を繁栄に導くイザベラよ。おまえは二千年もの間、エリアスに騙されていたのだ」

 セドリックは熱に浮かされたように鏡の中をのぞき込んだ。すると、セドリックの肩口から鮮血が飛び散り、身体が硬直したまま後ろへバタンと倒れた。

「何が……起きた?」

 ぴくりとも動かないセドリックを確認したアレクは、地面に投げ出された鏡をじっとにらんだ。

 ゆらゆらと黒いもやが鏡から漏れている。そのもやは次第に濃さを増し、人の姿へと変貌していく。

 その姿に、セレナの胸は激しく上下した。それは、鏡に映した自身とみまごうばかりの姿だった。

 いくら、イザベラの生まれ変わりだと言われても、心のどこかで他人事のように受け止めていたかもしれない。

 自身がイザベラであるという明確な証拠を見せつけられて、戸惑いは隠せなかった。
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