運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「あれが、イザベラの怨念ですか。なかなか手強いですね」
「教皇猊下……?」

 隣に立つライナスが、やや焦りを覚えているような表情をする。

「おとなしく、鏡に戻ってくれるといいのですが。……オリオン、あなたも力を貸してください。周囲に、シールドをっ!」
「おまかせをっ。……シールド!」

 オリオンが叫んだ瞬間、薄い膜が周囲を取り囲む。

「エリアス……。どうして私を裏切ったの……」

 イザベラの瞳は紅く輝き、悲しみに満ちていた。怨念の正体は、彼女の絶望なのかもしれない。

「どうして……」

 震えるような声。怨念そのものが感情を持ち、泣いている。

 セレナは胸をつかんだ。きしむように痛い。絶望を背負って生きてきた半身の苦しみが襲ってくるようだった。

「俺は裏切りなど……」

 アレクが小さく首を振ると、イザベラはカッと目を見開き、彼へと襲いかかった。かまえる剣などもろともせず、長く伸びたイザベラの手が、アレクの首を締め付ける。

「クッ……!」

 アレクが身をよじる。

 いけない。このままでは、アレクが死んでしまう!

 こんなの、愛情でもなんでもないっ。

「やめてっ! やめて、……イザベラッ!」

 セレナは張り裂けそうな声で叫んだ。

 すると、イザベラの紅い目がこちらをにらみつけた。紫の光を帯びた髪が、蛇のようにぐにゃりぐにゃりと空を漂い、全身からすさまじい執念の炎を発している。

 もう何を言っても通じない。そう思えるほどに、ただただ怒りが宿っている。
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