運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 セレナは両手を突き出した。手のひらからあふれる紫の光に、ルーガの角が放つまばゆい光が混ざり合っていく。

「裏切って……ないだと?」

 イザベラの憎悪が押し寄せてくる。

 信じていたのに、なぜ鏡に閉じ込めた!
 一人でどれほど心細かったか。
 許さない……許さない……許さないっ!

 彼女のうらみがどんどん心に流れ込んでくる。

 苦しい……。

 胸を押さえたとき、闇と光が入り混じる魔力の束が、大きくねじりながら、イザベラへ目がけて飛んでいく。

「許さないっ!」

 イザベラは全身から憎悪を凝縮したかのような闇の波動を放った。

「セレナ!」

 相殺しきれなかった衝撃の反動で、アレクの叫びとともに、セレナの身体は強く突き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。

 セレナはおそるおそる目を開ける。

「アレク……?」
「大丈夫か?」

 小さくうなずいたセレナは、アレクの腕の中にいた。無事であることを確認するように息を深く吸い込む。痛みはどこにもなかった。

「イザベラは?」
「見ろ、あれだ」

 アレクの視線の先を追う。

 輝く娘が、鏡の上で微笑んでいた。……神々しい金の髪に、優しい青の瞳。顔立ちは自分と瓜二つ……、彼女がイザベラだとすぐにわかった。

 次第に彼女の身体が背後の景色に透けて、薄れていく。

 エリアスを愛したイザベラは、安らぎの微笑みを浮かべて消えた。

 ──ありがとう。

 そう聞こえた気がした。

 鏡は砕け散り、光の炎に包まれた。残った灰は熱を失い、風に吹かれて、跡形もなく消えていく。

 残されたのは、静かな風と、祈りを捧げるように降り注ぐ光だけだった。
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