秘密の多い後輩くんに愛されています

「あっ、そうだ。上田くんの入れてくれたコーヒーすごく美味しかったよ。ありがとう。仕事中は甘めのコーヒーが飲みたくなるんだ」

「知ってます」

「……へっ?」

「何度か給湯室で一緒になったことがあるんで」

「あ、あぁ!」

そっか、そういうことね。

上田くんの返答に動揺してしまった私はわずかに浮いていたタイルに気付かず、足を引っ掛けた。

「えっ、」

勢いそのままに両膝を地面へと強く打ち付ける。

「痛たたたた……」

「白鳥先輩、大丈夫ですか?」

私と同じ目線になるようにしゃがんでくれた上田くんと目が合って、なんだか恥ずかしくなった。

転んだ原因が動揺したからって……二十六歳にもなって何やってるんだか。

「大丈夫、大丈夫」

そう返事をしたけれど、膝を打ち付けた衝撃でパンストは破れ、夜道でもわかるほどはっきり血が流れている。

「あちゃー」

「消毒……その前に洗わないと。あの……」

「うん?」

「うち、すぐそこなんで手当てしていきませんか」

S駅と目と鼻の先にある高層マンションを指さす上田くん。

「でも、」

「このままだと電車にも乗れませんし。何より心配なんで」

上田くんの言うとおり、このまま電車に乗るわけにはいかない。

「じゃあ、お言葉に甘えて消毒だけさせてもらってもいいかな?」

「はい」

立ち上がると思っていた以上に痛みがあり、マンションまで上田くんの肩を借りながら歩いた。


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