秘密の多い後輩くんに愛されています

「次は手を見せてください。擦りむいてましたよね」

「あ……お願いします」

受け身を取った時に擦りむいた左の手のひらを差し出すと、今度は別の薬が塗られる。

「これ、乾くやつらしいんで」

「ありがとう。ねぇ、上田くん。さっきから気になってたことがあるんだけど、もしかして上田くんも暁先生のファン?」

リビングの隅にある本棚には暁先生の小説がずらりと並んでいる。

それもデビュー作から昨日、発売された新作まで発売日順に。

「……まぁ、はい」

暁先生の小説はメディア化もされたことがあるし、有名な作家さんだけど、こんな身近に同志がいるとは思わなかった。

これからは上田くんと小説の話ができるかもしれないと思うとなんだか嬉しい。

「終わりました。これ、よかったら持って帰って使ってください」

残った塗り薬と絆創膏を袋にまとめてくれる上田くん。

「あと、膝は病院で診てもらったほうがいいと思いますよ。土曜も開いてる病院があるんで」

「ありがとう、そうするよ。これ全部でいくらだった?」

「お金はいいですよ。俺が無理に連れてきたんで」

「だめだよ。こういうことはきっちりしないと。本当ならバスルーム使用料も払わせてもらいたいぐらいなんだから」

「……何ですか、それ」

リビングに響いた笑い声に思わず目を丸くする私。

上田くんが笑うところって初めて見た気がする。

もっとはっきり顔が見られたら……。


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