秘密の多い後輩くんに愛されています

「ドキドキはしてる……けど、これが上田くんを意識してのものなのか、それとも動揺からきているものなのか、今はまだはっきりとわからない」

「暁先生は『その胸の高鳴りを、直感を信じろ』って言ってましたよ」

上田くんが口にしたのは暁先生の小説にある有名な台詞だ。

主人公のことが好きなのに一歩踏み出せないヒロインに向けられたもの。


「あれはフィクションで─」

「でも、書いたのは俺です」

「……ん?」

書いたのは俺? 今、そう言った?

何かの聞き間違いではなくて?

「書いたってどういうこと?」

「白鳥先輩の好きな小説家の暁は俺です」

上田くんが暁先生で、暁先生が上田くん?

た、確かに年齢は同じだけれど作家で十分食べていける暁先生がどうしてうちの会社で働いてるの?

……というか、そんな大事なことをなぜ今カミングアウトしたのか不思議でならない。

「その顔は信じてませんね」

自分のスマホを手に取った上田くんは、画面をスクロールして何かを見つけると私にスマホごと差し出してきた。

画面には印税の証明書が映し出されていて、宛名は【上田暁斗(暁)様】となっていた。

「これで信じてもらえますか?」

「う、嘘……。本当に上田くんが暁先生なの⁉」

「そうです」

「暁先生がどうしてうちの会社に?」

「社会勉強の一環です」

上田くんがいつも定時で帰宅していた理由は作家とのダブルワークだったから……?

彼が暁先生ならタワマン暮らしも納得がいく。



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