あなたと私を繋ぐ5分
「ダメ元で来たんだが助かった」
そう言葉にすると、電源のついたタブレットを操作しようと伸ばした指が大きく震えた。
「お役に立てたのならよかったです。ではすみません、ご確認いただいた上でこちらにサインを」
素早く画面を操作しながらそう答えた彼女は、液晶画面を鷺沼の方に向けながらタッチペンを差し出した。
鷺沼がサインを書いている間に、素早く用意された該当のキーが用意される。
「お待たせしました」
「ああ、ありがとう」
手のひらを差し出すと、その上にキーが置かれる。美咲の指は鷺沼の手には全く触れることなく、静かに離れていった。
資料保管庫の鍵をスムーズに借りられたこともあり、その日のタスクは順調に進んだ。
ただそれでも、鷺沼の部署では残業が当たり前になっていた。クライアントからの要望ありきで業務をすすめらければならないため、先方から連絡が来たら定時間際でもその要望に応えようとしてしまうからだ。
とはいえ、上からのライフワークバランスを考えるべく長時間の残業は控えるようにとのお達しがあり、徐々に部署内にも変化が現れていた。といっても多少は残業した部下の帰宅後に、彼らの仕事内容をチェックするのだから、どうしてもさらに自分の帰りは遅くなる。
誰も残っていない部署のオフィスの窓から外を眺めると、夕方から降り出した雨はすっかり土砂降りになっていた。
朝、降っていなかったから油断した。
傘を持ってきていないことを思い出し、気分が重くなる。最寄りのコンビニに駆け込むか、と悩んでいると、ふいに部下が『総務部に置き傘のストックがある』と話していたのを思い出した。
社内に置き去りにされたビニール傘を、貸し出していると言っていたような気がする。鷺沼は、プリンターが仕事をしている間に、総務部へと向かった。少しだけ、心が弾む気配がするのは、きっと気のせいだ、と言い聞かせながら。
あかりのついた総務部を覗くと、朝と同じような光景だった。
美咲がひとり、パソコンに向かっている。株主総会が近づくと総務部は忙しくなる、というのは社内の誰でも知っていることだ。
ただ他の社員が帰宅しているのをみると、彼女はそれ以外にも仕事を抱えているのかもしれない。
そう言葉にすると、電源のついたタブレットを操作しようと伸ばした指が大きく震えた。
「お役に立てたのならよかったです。ではすみません、ご確認いただいた上でこちらにサインを」
素早く画面を操作しながらそう答えた彼女は、液晶画面を鷺沼の方に向けながらタッチペンを差し出した。
鷺沼がサインを書いている間に、素早く用意された該当のキーが用意される。
「お待たせしました」
「ああ、ありがとう」
手のひらを差し出すと、その上にキーが置かれる。美咲の指は鷺沼の手には全く触れることなく、静かに離れていった。
資料保管庫の鍵をスムーズに借りられたこともあり、その日のタスクは順調に進んだ。
ただそれでも、鷺沼の部署では残業が当たり前になっていた。クライアントからの要望ありきで業務をすすめらければならないため、先方から連絡が来たら定時間際でもその要望に応えようとしてしまうからだ。
とはいえ、上からのライフワークバランスを考えるべく長時間の残業は控えるようにとのお達しがあり、徐々に部署内にも変化が現れていた。といっても多少は残業した部下の帰宅後に、彼らの仕事内容をチェックするのだから、どうしてもさらに自分の帰りは遅くなる。
誰も残っていない部署のオフィスの窓から外を眺めると、夕方から降り出した雨はすっかり土砂降りになっていた。
朝、降っていなかったから油断した。
傘を持ってきていないことを思い出し、気分が重くなる。最寄りのコンビニに駆け込むか、と悩んでいると、ふいに部下が『総務部に置き傘のストックがある』と話していたのを思い出した。
社内に置き去りにされたビニール傘を、貸し出していると言っていたような気がする。鷺沼は、プリンターが仕事をしている間に、総務部へと向かった。少しだけ、心が弾む気配がするのは、きっと気のせいだ、と言い聞かせながら。
あかりのついた総務部を覗くと、朝と同じような光景だった。
美咲がひとり、パソコンに向かっている。株主総会が近づくと総務部は忙しくなる、というのは社内の誰でも知っていることだ。
ただ他の社員が帰宅しているのをみると、彼女はそれ以外にも仕事を抱えているのかもしれない。