あなたと私を繋ぐ5分
驚きと、なにより恥ずかしさで頭が混乱する。なんとか理由をつけて美咲と別れると、鷺沼は手のひらで顔を覆った。
頬が熱い。
ここ最近、自分が配信で語っているのは彼女の話ばかりではなかったか。
彼女はポッドキャストを楽しんでくれているようだったけれど、それが会社の先輩だと知ったら、どう思うだろうか。
とても、言えない。自分が潮騒だと、バレるわけにはいかない。
そして何より、羞恥心で彼女の顔をもう真っ直ぐに見つめられなかった。
それ以来、美咲のことを避けるようになってしまった。本当は話したいし顔を見たい。けれど美咲を目の前にしたら、逃げ出したくなってしまいそうで、怖くてとても近寄れなかった。
改めて、配信なんてなんの練習にもならないと気付かされた。
実際に、知っているひとに自分の考えを伝えるほうが、不特定多数に電波を使って話すより、よっぽど緊張するし、難しい。
午前中に飲み切ったタンブラーを洗おうと、給湯室に向かう。
すると、向こうから美咲が歩いてくるのが見えた。
彼女もコーヒーを淹れ直したのだろうか、手には見覚えのあるタンブラーを持っていた。
無意識に、目を逸らしてすれ違う。
ふっと目を伏せた瞬間、わずかに彼女の横顔が視界に飛び込んできて、咄嗟に追いかけたい衝動に駆られる。欲望をぐっと抑え込んでそのまま足を進めた。
勢いよく水栓を捻って、空のタンブラーに水を満たす。スポンジを手に取った瞬間、胸ポケットのスマホが鳴った。部下からだ。
「もしもし?」
『課長?どちらにいらっしゃいます?今営業から連絡があって――』
どうやら、取引先からの返事待ちだった企画に、動きがあったらしい。
要点を確認しながら、廊下を取って返す。メモを取ったせいで、タンブラーは給湯室に置いてきてしまったが、後で取りに戻れば良いだろう。
営業と共に客先に向かうと言う部下に同行することにする。大口の案件だ。
「サンプル、全種類揃えてくれ。データは俺のほうでまとめておく」
慌ただしく指示を出し、資料を打ち出し、ノートパソコンを鞄に突っ込む。
サンプルを抱えた部下と共に、オフィスを飛び出した。
頬が熱い。
ここ最近、自分が配信で語っているのは彼女の話ばかりではなかったか。
彼女はポッドキャストを楽しんでくれているようだったけれど、それが会社の先輩だと知ったら、どう思うだろうか。
とても、言えない。自分が潮騒だと、バレるわけにはいかない。
そして何より、羞恥心で彼女の顔をもう真っ直ぐに見つめられなかった。
それ以来、美咲のことを避けるようになってしまった。本当は話したいし顔を見たい。けれど美咲を目の前にしたら、逃げ出したくなってしまいそうで、怖くてとても近寄れなかった。
改めて、配信なんてなんの練習にもならないと気付かされた。
実際に、知っているひとに自分の考えを伝えるほうが、不特定多数に電波を使って話すより、よっぽど緊張するし、難しい。
午前中に飲み切ったタンブラーを洗おうと、給湯室に向かう。
すると、向こうから美咲が歩いてくるのが見えた。
彼女もコーヒーを淹れ直したのだろうか、手には見覚えのあるタンブラーを持っていた。
無意識に、目を逸らしてすれ違う。
ふっと目を伏せた瞬間、わずかに彼女の横顔が視界に飛び込んできて、咄嗟に追いかけたい衝動に駆られる。欲望をぐっと抑え込んでそのまま足を進めた。
勢いよく水栓を捻って、空のタンブラーに水を満たす。スポンジを手に取った瞬間、胸ポケットのスマホが鳴った。部下からだ。
「もしもし?」
『課長?どちらにいらっしゃいます?今営業から連絡があって――』
どうやら、取引先からの返事待ちだった企画に、動きがあったらしい。
要点を確認しながら、廊下を取って返す。メモを取ったせいで、タンブラーは給湯室に置いてきてしまったが、後で取りに戻れば良いだろう。
営業と共に客先に向かうと言う部下に同行することにする。大口の案件だ。
「サンプル、全種類揃えてくれ。データは俺のほうでまとめておく」
慌ただしく指示を出し、資料を打ち出し、ノートパソコンを鞄に突っ込む。
サンプルを抱えた部下と共に、オフィスを飛び出した。