あなたと私を繋ぐ5分
帰社したのは、日がとっぷりと暮れてからだった。先方のこだわりが強かったため、予想以上に打ち合わせに時間を取られたが、そのぶん一気に大型発注が見えた。上々の結果だった。
オフィスの自席にたどり着くと、デスクの上に見慣れたシルバーのタンブラーが置かれていた。
給湯室に置き去りにしていったことを思い出す。
部下の誰かが気づいて持ってきてくれたのだろうか。
そう思った瞬間、タンブラーの下にメモが挟んであるのに気がついた。
どくん、と心臓が鳴る。
『洗っておきました。余計なことでしたら申し訳ありません。藤宮』と、学校の先生のような綺麗な楷書体で書かれていた。
思わずタンブラーに手を伸ばす。
蓋を開けると、微かにコーヒーの香りが漂う。中には水滴ひとつ残っていなかった。
彼女を避け始めて、もう二週間近く経っていた。
それでも彼女は、変わらず接してくれる。それだけで、鷺沼の胸はじんと痺れた。
彼女にポッドキャストを聞かれていたからといって、なんだというのだろう。むしろ、彼女のために続けてきたことではないのか。
奇しくも今日は水曜日だ。
鷺沼はぎゅっと拳を握ると、一刻も早く帰宅すべく動き出したのだった。
オフィスの自席にたどり着くと、デスクの上に見慣れたシルバーのタンブラーが置かれていた。
給湯室に置き去りにしていったことを思い出す。
部下の誰かが気づいて持ってきてくれたのだろうか。
そう思った瞬間、タンブラーの下にメモが挟んであるのに気がついた。
どくん、と心臓が鳴る。
『洗っておきました。余計なことでしたら申し訳ありません。藤宮』と、学校の先生のような綺麗な楷書体で書かれていた。
思わずタンブラーに手を伸ばす。
蓋を開けると、微かにコーヒーの香りが漂う。中には水滴ひとつ残っていなかった。
彼女を避け始めて、もう二週間近く経っていた。
それでも彼女は、変わらず接してくれる。それだけで、鷺沼の胸はじんと痺れた。
彼女にポッドキャストを聞かれていたからといって、なんだというのだろう。むしろ、彼女のために続けてきたことではないのか。
奇しくも今日は水曜日だ。
鷺沼はぎゅっと拳を握ると、一刻も早く帰宅すべく動き出したのだった。