スパダリ御曹司は政略妻とベビーに一途愛を証明する
***

 そして、とうとうお見合い当日。

 私は、母が若いときに着ていた赤い着物に袖を通した。
 自宅の鏡の前で髪を整えていたら、隣に父が立ち、目を細めて優しく微笑んだ。

「七海は最近、本当に母さんに似てきたな」

 母に似てきた……この言葉が、私にはなによりうれしい。
 おぼろげな私の記憶の中で母はいつも優しく微笑んでいた。

 そんな母のようになり、そしていつか自分も温かな家族をつくりたいとずっと願い続けてきたのだ。


 背筋をできるだけ伸ばして、私は父と会場へと向かった。
 場所は、都内の一等地。格式高いホテルの一角にある落ち着いた佇まいの料亭だ。

 会場に入るなり、やけに緊張してきた。
 いまだに葉室グループの男性とお見合いなんて信じきれない気分でもあった。

 入口から案内してくれた女性が、襖を静かに開く。
 その瞬間、視線が自然とひとりの男性に向いた。

 写真の彼――葉室朔也さんだ。
 写真で見たよりもずっと落ち着いていて、やわらかく、そして……。

 かっこいい……。

 実物の彼は、本当に精悍な顔つきをしていた。

 細身に見えた体格だって、直接見てみればほどよく肩幅があり筋肉もついていそう。
 まるで雑誌やテレビから抜け出てきたようで、つい見惚れてしまった。

 けれど同時に、直接こうして会ってみて、雲の上のような存在であると痛感する。
 私では釣り合わない。そう心の奥で確信してしまう。
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