スパダリ御曹司は政略妻とベビーに一途愛を証明する
***

 それから、私たちは二度のデートを重ねた

 どちらも休日の昼下がりに待ち合わせて、夜八時には朔也さんが私をきちんと自宅まで送り届けてくれる――そんなデートだ。

 そして、三回目のデートの日。
 家を出る前に、髪形をどうしようかと洗面スペースの鏡の前で悩む私を見て、父が声をかけてきた。

「そろそろ、結婚の具体的な話が出てくる頃かもしれんな」
「……そうなったらいいんだけど」
「なんだ? デートはうまくいっていないのか」
「いや、すごく楽しい。朔也さん、話がうまいし、リードもしてくれるし……。でも、肝心の結婚の話は出ないんだ。もしかして私じゃダメだって、ほかの女性とお見合いしていたらどうしよう」
「それはないだろう」

「どうしてそう言いきれるの!」

 思わず声を荒らげてしまい、心を落ち着かせるようにひとつ咳をした。
 不安があったから、つい父にあたったのだ。

「ごめんなさい」
「いいや、気にしていない。珍しいなと思っただけだ」

 だってデートを重ねるたび、どう考えてもお見合いなんて必要のない男性に思える。
 一緒に歩いていれば、周りからはチラチラ見られるし、わかりやすく『あの人かっこいい』なんて言われて、そして必ず最後は隣にいる私に視線がきて『妹かな?』と言われるのだ。

 それはふたりの距離感にもあった。
 手もつながない、そんなデートだったから。

 彼はこれまできっと女性と付き合った経験だってあるだろうに、私には恋愛感情が湧かないのだろうと思うたび傷つく。
 これは政略結婚だと割りきっていたはずなのに。彼の恋愛感情なんてなくてあたり前のはずなのに……。

 ふと見ると、父は目を細めて私を見ていた。

「な、なに……?」
「いや、七海は朔也さんに好意を持ち始めているのかと思って」
「こ、好意を持ってないとデートなんてしないよ。まして結婚前提でなんて」
「それもそうだな。……ほら、時間は大丈夫か?」
「うわ、本当だ!」

 私は慌てて髪を整え、そのまま鞄を持って家を飛び出した。
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