スパダリ御曹司は政略妻とベビーに一途愛を証明する
***

 しかし、大きな問題はその夜だ。

 わかっていたし、避けては通れない道。
 でも、心のどこかで『もう少しだけ待ってほしい』と願う自分がいた。

 だって私たちはデートで手もつないでいない。キスしたのだって、結婚式が初めてだ。
 それなのにこれから体を重ねる……なんて妙な感じがする。

 まだ初日だからゆっくり進んでいってくれるだろう、という思いと、彼が女性に慣れた人間ならまったく躊躇せず進んでいくだろうという思いが交互に浮かんだ。

 そのせいで、私は結婚式を挙げた後の夜、ホテルのスウィートルームに入っても、うろうろしている。どうやっても落ち着かない。

 ふいにうしろから名前を呼ばれた。

「七海さん?」
「はっ……はいっ、朔也、さん……」

 肩がぴくりと跳ねる。振り返れば、彼が穏やかな瞳でこちらを見つめていた。

「ずっと、聞きたいと思っていたんだけど」
「はい。なんでしょう?」

「『七海』って、呼んでいい?」

< 27 / 42 >

この作品をシェア

pagetop