スパダリ御曹司は政略妻とベビーに一途愛を証明する
 しかし、妊娠がわかったからといって、すぐに幸せいっぱいのマタニティライフが始まるわけではなかった。

 私は、つわりがひどいタイプだったのだ。

 ついには入院する事態になってしまい、申し訳ないと言った私に、朔也さんは「おなかで命を育てる以上に大切なことなんてないだろ。七海が今していることは、俺には絶対できないことなんだ。だから謝るなんてしないでくれ」と、真剣な表情で伝えてくれた。

 やっと出産となったときも、ずっと彼が手を握って支えてくれた。
 朔太郎が生まれ、息も整わぬまま隣に立つ彼を見上げた瞬間、私よりも先に彼の目が潤んでいるのがわかった。

「……ありがとう、七海。よくがんばったな」

 声はかすれて、小さく震えていた。
 小さな命をそっと腕に抱きながら、彼は何度も「かわいい」と繰り返し、目を細める。

 つらかったけど……この人の子どもを産んでよかった。

 私は心の底から、そう思っていた。
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