スパダリ御曹司は政略妻とベビーに一途愛を証明する
 そして三人の日々を重ねるにつれて、私たちはどんどん家族になっていった。

 休日に三人で公園を歩き、川の字になって眠って、朝食を三人で囲む。その一つひとつが、胸がいっぱいになるほど愛おしくて、私は幸せをかみしめていた。

 もちろん、いつも笑っていられたわけじゃない。

 朔太郎は夜泣きがひどくて、何度も高熱を出した。眠れない夜、暗い天井を見上げながら、何度自分も泣きたいと思っただろう。イライラしてしまう日だってあった。
 そして自分の余裕のなさに、後から自己嫌悪する。

 でも、そんなとき、いつも朔也さんが隣にいてくれる。ぐずる朔太郎を根気強くあやしながら、決して声を荒らげず、淡々と支えてくれた。

 ある夜、夜泣きがひどくて絶望しかけていたら、朔也さんが朔太郎を抱き上げてオムツを確認し、替えてくれた。

 ようやく落ち着いたらしい朔太郎は、彼の腕の中ですうすうと寝息を立て始める。
 そっと下ろしても、泣き疲れたのかもう目を開けることはない。

 時計を見れば、深夜……いや、朝の四時。

 眠いはずなのに妙に目が冴えて、ふと彼の方を見やる。すると、彼は「眠れなくなった? 大丈夫か?」と私に聞いた。
 うなずいたら、彼も「俺もそうなんだ。じゃあ、早朝のお茶でも飲もうか」と微笑む。

 ふたりでキッチンに行き、並んで湯気の立つお茶をいれた。
 言葉はなくても、心が落ち着いていくのを感じる。

「朔也さんって、どうしてそんなに子育てがうまいんですか? 私なんて、あたふたしてばかりで……」
「いや、俺だって、心の中ではずっと、あたふたしているよ」
「え?」

 思わず聞き返したら、彼はカップを手に取りながら、まっすぐにこちらを見た。

「でも、隣に七海がいるってわかってるから、なんとかなるって思えるんだ。なんていうか、同志が近くにいてくれる安心感みたいな感じでさ」

 そうか。……私たちは、子育ての〝同志〟なんだ。

 そんな事実がなぜかすごくうれしくて、それからも何度もつらくなるたび、その言葉を思い出した。
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