完璧御曹司の執愛から逃げ、推しのアイドルと結ばれる方法
 お姫様抱っこというやつだが、船上でされると身を預けるようで怖い。
 私は思わず玲さんの首に抱きついた。

「そういう素直なところが、もっと見たかったな」
 玲さんの小さく呟く声が急に冷ややかになった。
 私は心臓が急に冷やされたような謎の恐怖を覚える。
 ぼーっとしていた頭が、恐怖で覚醒するのが分かった。
 
「玲さん、私、もう少し素直になるようにしてみるよ。今まで、感じ悪くてごめんね。そういえば、花火はまだ?」
 私は恐怖と罪悪感でぐちゃぐちゃな感情になり、気がつけば彼に謝っていた。

「あと、30分くらいで始まるかな」
 私の謝罪をスルーし、彼が花火の開始時間を告げてくる。

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