敏腕自衛官パイロットの揺るがぬ愛が強すぎる~偽装婚約したはずが、最愛妻になりました~
 安定した会社を辞めるのには勇気がいったが、帰郷後に受けた健康診断でひどい貧血と体重減少がわかり、心身を健やかに戻すためにも必要な決断だった。おかげで今ではすっかり健康体である。


 『それにしてもこんな偶然ってほんとにあるんだな』
 「ね、びっくり。久しぶりに元気そうな声を聞けてよかった」
 『俺も』


 そう言ったきり会話が途切れる。あとはなにを話したらいいのかわからなくなった。
 たぶんそれは恭平も同じだろう。仕事の話と近況報告が終われば、別れたふたりに話はない。


 『……ともかく航空祭の写真、よろしくな』


 恭平が沈黙を破る。


 「うん。当日は別行動でいいのよね?」
 『あぁ……せっかくだから久しぶりに顔を見たいけど、ちょっと厳しいだろうな』
 「わかった。締め切りまでにファイル送信サービスで提出するね」


 スカイフォーカスのホームページに記載されたメールアドレス宛に、あとで恭平からメールをもらえることになっている。


 『オッケー。楽しみにしてる』


 懐かしい声に「またね」と告げる。
 別れた恋人との偶然の〝再会〟は、意外なほど平静を保っていられた。たぶんそれは恭平との過去が、彩羽の中でしっかりカタがついているからだろう。恨みつらみはなく、お互い納得したうえでの別れだったから。
 通話を切り、彩羽は空を見上げた。
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