敏腕自衛官パイロットの揺るがぬ愛が強すぎる~偽装婚約したはずが、最愛妻になりました~

 八月下旬、航空祭当日。彩羽は一眼レフカメラを肩に掛け、自衛官推しのゆかりとともに松島基地へやって来た。
 今日までの間に航空機の撮影に必要な知識を仕入れ、仙台空港では旅客機の撮影で練習も積んでいる。
 遥か遠くの空に雲はかかっているが、基地上空は快晴。絶好のコンディションである。
 ブルーインパルス目当てに集結した大勢の人たちからは、展示飛行への期待がすでに高まっているのを感じずにはいられない。その中に身を置くだけで、彩羽まで気持ちが高ぶってくる。


 「この日をどれだけ待ちわびたことか! あぁ憧れのブルーインパルス!」


 興奮気味に天を仰いだゆかりは三歳のときから毎年この航空祭に足を運んでいる、生粋の航空自衛官オタクだ。都合のつく限り日本全国どこへでも、ブルーインパルスを追いかけていく。
 いっぽうの彩羽は、高校生のときにゆかりに誘われて一度来た以来。じつに十年ぶりの航空祭である。


 「今日はここで憂さをパーッと晴らすわ!」
 「そんなに鬱憤がたまってるの?」
 「そりゃあそうでしょう? この前の婚活パーティーが不発だったんだから」


 キラキラと輝かせていた目を糸のように細くする。
 ゆかりはあのパーティーでカップルが成立しなかった。あちこちと目移りして男性を渡り歩いているうちに、目ぼしい人は次々とお相手を決めてしまったのだとか。


 「移り気なのもほどほどにしないとね」
 「だって素敵な人がたくさんいたんだもの。仕方がないでしょう? っていうか、興味がないふりして、ちゃっかりカップルになっちゃう彩羽に言われたくな~い」
 「だからそれは、あのパーティーを脱出するための偽りだって」


 ゆかりには、パーティー会場を出たあとに〝仮初めの恋人〟と行ったレストランで【先に出るね】とメールを送り、その夜のうちに事情を正直に打ち明けてある。


 「とかなんとか言いながら、ふたりでデートしてたくせに」
 「デートじゃなくて、ただのお礼だから。あれからなにもないし」


 受付でそれぞれに連絡先をもらっているが、あれきりだ。

 (というか、そういうつもりでカップルになったわけじゃないんだし当然よね)

 あの場限りの関係だったのだから。
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