敏腕自衛官パイロットの揺るがぬ愛が強すぎる~偽装婚約したはずが、最愛妻になりました~
 「せっかくカップルになったのにもったいない。どこの駐屯地に赴任してるのかも聞いていないなんて」
 「聞く必要がなかったから」


 レストランでそんな会話になりかけたタイミングで料理が運ばれてきたため、それっきりに。おいしい料理を前にしたら、その話題はすっかり忘れてしまったのだ。


 「彩羽ってほんと空にしか興味がないのね。あ、でも今日は元彼からもらった仕事だし、焼け木(ぼっ)杭(くい)になんちゃらら~ってことになるかも?」


 ゆかりがニタニタしながら彩羽の顔を覗き込む。


 「もう終わった恋だからなりません」


 きっぱりと断言した。その点については清廉潔白だ。


 「人生なにが起こるかわからないよ~? 嫌いで別れたわけじゃなく、一度は好きになった人なんだから。今日、彼もここに来てるんでしょう? 電話じゃなく久しぶりに顔を見たら再燃するかも」
 「取材で忙しいみたいだから会いません」
 「なんだ、つまらないの」


 ゆかりは不服そうに唇を尖らせた。
 なにが起こるかわからないのが人生なのは彩羽だって知っている。仲良しだと思っていた両親は離婚したし、大手に就職して順風満帆だった彩羽は退職して新しい道を歩んでいる。

 (でも恭平くんとの未来は、ない)

 そう言いきれるのは、完全に彩羽の心から彼の存在が消えているから。それを電話で確信した。

 (だけどこの先、私に恋なんて訪れるのかな)

 なんの前触れもなく透矢の顔が浮かび、慌てて頭から追い出す。

 (やだな、どうしてそこで彼が出てくるの)

 気を取りなおして空を見上げたそのとき、展示飛行を開始するアナウンスが会場内に流れた。
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