【1話だけ】皇子妃は空気が読めるはずなのに、なぜか夫の気持ちだけはわからない
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面会中はギリギリ堪えていたナツメだったが、それが終わり特使が別室に案内されるや否や、父に詰め寄った。
「どうして私なんですか⁉︎」
「そなたしかおらんだろう」
「ちょっとその親書見せてください!」
それは、強引に父の手から奪い取る。
親書にシワが寄ったが、そんなことを気にする余裕はない。
大きく寄ったシワをそのままにして、目をかっぴらいて読んだ。
そうして読み終えると叫んだ。
「私じゃなくてもいいじゃないですか!」
「それでも、そなたしかおらん!」
「エンジュお姉様は?」
「エンジュを外国に嫁がせるわけにはいかん。あれのスキルは……」
ソルダシア帝国の皇帝は、シンナ王国の王女を第三皇子の嫁にほしい、くれ、と要求していた。
「我々のスキルはどの国であっても手に入れたいと願うものだ。だからこそ、気をつけるべきだ。神から授けられたスキルが、争いの種になるようなことは絶対にあってはならない」
「言い換えると、何にも役に立たないスキルの私だったらどこへ出しても構わない、ということですね……」
「あっ、いや、そうではない!」
娘に不用意なことを言ってしまったことに気がつき、慌てて説明し直す。
「そなたのスキルは、他人には分かりにくい。黙っていればスキルがあることすら気取られないだろう。それに、仮にバレたところで、悪用もされにくい。父の言っていることは分かるだろう?」
「確かに、そうですが……」