真夜中の償い
由里は母を亡くした時より、なにより悲しくて心に穴が開いたような喪失感に打ちのめされた。

でもリアムと子供たちに励まされ立ち直ることができた。

子供たちが手を離れるとリアムの片腕として、主にホテルカサブランカグループの方に力を注いだ。

今では誘致に国レベルで声がかかりフランチャイズのような感じで、RKOは実質の建設などの費用は出さずに運営や設計客室内装などのカサブランカブランドを提供していった。

もちろんそれにはきびしい審査がなされたので、各国のカサブランカホテルはとても好評だった。

その国の独自の特徴を持ったカサブランカホテルが誕生していった。

由里はどんな時もカサブランカブランドを大切に、コンセプトプランを決めていった。

カサブランカホテルは由里にとって生涯にわたって大切な仕事であり喜びでもあった。 
 
リアムは65歳でCEOをクランに譲りその後は会長となった。

リアムは歳を重ねるごとに渋くセクシーで凛とした男らしさが加わり、幅広い女性たちを魅了し続けた。

ジョギングやジムで体を鍛えることはリアムの趣味でもあるので、体形も若い頃とほとんど変わらなかった。

由里は生涯リアムの彫像のような体と、歳を取ってもなお魅力を増す美貌に魅了され続けた。

相変わらず若い女性や高齢の女性までリアムに引き寄せられている。

でもいつもリアムの視線の先には由里しかいなかった。

由里以外は興味がないと言って憚らなかった。

子供達や孫達はそんな二人を微笑ましく見守ってくれた。

会長就任後は、由里と世界中のカサブランカホテルを視察しながら過ごした。

そして、ロングアイランドの自宅で大工仕事も楽しんだ。

子供や孫たちに机や椅子やベッドまでも手作りしてプレゼントした。

そして庭の一角に2年かけてゲストハウスまで建てた。

孫達が訪ねてくるのを楽しみにして、由里と二人で穏やかな晩年を生きた。

子供達も孫達も由里の作る料理が大好きで二人がロングアイランドにいるときは、誰かがいつも訪ねてきて由里の料理を楽しんだ。

由里の料理の腕を受け継いだケイラは結婚後料理研究家として、和食、洋食、中華と融合させた独自のレシピを開発し料理本を何冊も出版した。

クランとオーエンはリアムとケンを彷彿とさせた。

二人でRKOを盛り立て守り次の世代に引き継いでいった。

リアムは生涯由里を愛し守り片時も離さず由里に手を握られて85歳の生涯を閉じた。

由里はリアムの手を握りながら”リアムずるいわ。私が貴方の側に行く時にはリアムに手を握っていてもらえないなんて…”リアムの耳元でそっとそう呟いて、彼の手に口付けたのだった。

戸籍には自分の名前しかなく家族もなく養護施設で育った一人の少女は、自立して努力を惜しまず周りに認められていった。

そして、たくさんの人に愛されて最愛の人と出会い彼に寄り添い温かい家庭を築いた。

最後には子供や孫達に見守られて静かに微笑みながら人生を終えた。

由里の人生最後の言葉は≪リアム≫だった。

そう言うとふっと笑って静かに息を引き取った。

見守る子供や孫達は、

「グランパが迎えに来た」                   

そういって、みんなで泣き笑いしたのだった。

実際由里は感じていたのだ。リアムがベッドのそばに立って由里に手を伸ばしてそっと手を握ってくれた事を…

そして由里の耳元で”モグロー”(愛する人)といつもの少し低いセクシーな声で囁いたのを…

境遇に負けず努力を惜しまず、いつも謙虚で人を押しのけることなく優しく思いやりに満ち自分の人生を逞しく切り拓き力強く生きた由里は、最愛のリアムの隣に埋葬された。

その墓碑には

≪多くの人に愛された最高の妻であり母であったユリ・オハラここに眠る≫とあった。
                                  
                                 完

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