転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「もしも1人では難しいと感じた時は、言ってくれ。いくらでも支えてやる。遠慮はせずにいつでも、頼ってほしい」

 そんな後ろ向きな私の思いを口にせずとも、彼はなんとなく読み取ってくれたのだろう。
 ディルクさんはそう言い残すと、大きくてゴツゴツとした手を離して部屋を出て行った。

 ――別れ際、お礼の1つや2つでも伝えられたらよかったのに。
 強く拒絶してしまった手前、再び彼の手に触れてもいいのかと悩んだ末、うまくあの人に助けを求められなかった。

「どうしたらいいの……」

 あの人は、神殿から定められた結婚相手。
 彼と結婚すれば、将来的には夫妻として子を成す必要が出てくるだろう。
 そうなれば、純潔を捨てる必要が出てくる。
 ユニコーンと一緒に居たいと願うのならば、彼と肌を重ねるなどもってのほかだ。

 ――彼が夜の営みは一切必要ないと言ってくれたら、心置きなくディルクさんの手を取れるけれど……。

 そんなに都合よく進めば、これほど頭を悩ませる必要などなかった。

「ユニコ~ッ!」

 誰でもいいから、相談に乗って欲しい。
 そんな思いに、応えたのだろうか。
 勢いよくリビングに繋がる扉が開き、真っ白な毛並みの神獣が飛び出してきたのは。
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