転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 カルトンさんは肩を竦めたあと、呆れたように声を発する。
 私はディルクさんの呼び方が変わっていることに気づき、思わず指摘してしまう。

「お名前では、呼ばないんですね」
「んー? まぁな。殿下なんて呼んでたら、一発でバレちまうだろ?」
「みんなで、私を騙して……。楽しかったですか」
「オレはお嬢ちゃんのことを、なんも知らねーけどさ。ディルクのことなら、なんとなくわかる」

 私が険しい表情で刺々しい発言をすれば、カルトンさんは口元だけを綻ばせながら告げた。

「お嬢ちゃんとの結婚にこだわっているのは、許嫁だからじゃねぇ。あいつは、あんたに対する想いを拗らせてるんだ。それがなかなか表に出てこねぇから、伝わらないんだろうけどさ。全部、好きな女の子に対する特別待遇だよ」
「嘘をついていい理由には、なりません」
「あー。まぁな。それもそうか」

 ディルクさんを恐れることなく受け入れるがべきだと後押しされても、どうにも実感が湧かない。
 優しい言葉を投げかけられたところで、前世で受けた心の傷がすぐに癒えるわけではないからだ。
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