転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 ――泣いている場合じゃない。
 ちゃんと、話さなきゃ。
 ディルクさんを知る努力をするために、ここへ来たことを忘れちゃ駄目……!

 そう何度も自分に言い聞かせ、己を奮い立たせた。

「殿下と顔を合わせる前に、帰るか?」

 せっかくカルトンさんに協力してもらい、妹と鉢合わせるかもしれないリスクを犯してやってきたのだ。
 このまま目的を達成する前に逃げ帰るなど、冗談ではない。
 私は勇気を振り絞り、はっきりと宣言した。

「嫌、です……。泣き言を言って、申し訳ありませんでした……」
「おう。一歩前進だな! 殿下もきっと、喜ぶぜ」

 カルトンさんは私の成長を喜ぶように、満面の笑みを浮かべた。

「あれ? ゼヅロム卿。また新しい女の子と遊んでるんですか?」
「殿下に怒られますよ」
「おー。お前ら。ちょうどいいところに」

 彼は騎士服を身に纏った男性たちに声をかけられ、ヒラヒラと手を振る。
 見知らぬ人にカルトンさんの女だと勘違いされている現状は不満で仕方ないけれど、声で聖女シエルだと露呈してしまう可能性も否めない。

 ここは黙っているのが正解だ。
< 111 / 249 >

この作品をシェア

pagetop