転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「殿下……」

恐る恐る彼を呼び、目を合わせる。
普段と異なる容姿や格好のせいで目を見開いてはいたが、すぐさま嬉しそうに口元を綻ばせた。

「よく、来たな……」
「おー。仕事の邪魔をしちまって……」
「黙っていろ」

 しかし、彼の上機嫌な様子は長くは続かなかった。
 ディルクさんは護衛騎士に冷たく言い放つと、苛立ちを隠せない様子で席を立つ。

 ――なんでこんなところに来たんだって、殿下に怒られる……!

 私はぎゅっと両目を瞑り、雷が落ちるのを待ち続けた。

「シエル」

 しかし、いつまで経っても想像どおりの展開は起きない。
 それどころか、細い身体を優しく抱きしめてくれた。
 私を呼ぶ殿下の声音は、とても優くて……。

「怒って、いないのですか……?」
「なぜ?」
「入室の許可を、得なかったので……」
「あれは、カルトンに言った。シエルなら、いつでも大歓迎だ」
「殿下……」

 どうやら、不機嫌に見えたのは護衛騎士に苛立っていただけだったようだ。
 ほっと胸を撫で下ろせば、触れた場所から熱が伝わる。
 その感覚に酔い痴れていると、彼から苦言を呈された。
< 114 / 249 >

この作品をシェア

pagetop