転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「いや。君は、何も悪くない」
「ですが……」
「俺の心が、狭いだけだ。護衛騎士でさえも君の隣にいるのが許せないなど、どうかしている……」

 ディルクさんの口から想像もしていなかった言葉が飛び出し、驚いてしまう。
 私たちはただ、並んで歩いていただけなのに……。
 今の光景のどこにそんな感情をいだく要素があるのか、不思議で堪らなかった。

「君の隣に並び立ちたいと願うだけでは、その想いは届かない。そう、強く思い知らされた」
「それは……」
「答えが出るまで、黙って待つつもりだったのだが……。そんな悠長なことを言っている間にほかの男に取られてしまう。その可能性を、もっと考慮するべきだった」

 彼は暗い表情で矢継ぎ早にそう告げると、フ再び大きな腕ですっぽりと小さな身体を抱きしめた。

「もう少しだけ……。君のぬくもりを、感じさせてほしい……」
「ディルク、さん……?」
「俺がシエルを誰にも渡したくないと思うほどに愛していると、刻み込むためにも……」

 私には、異性と密着する機会などほとんどなかった。
 そのせいで、このような些細な触れ合いですらもドキドキと心臓を高鳴らせてしまう。
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