転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 ユニコーンは私と離れるのを嫌がったが、少しだけならと渋々距離を取る。
 それを満足そうに眺めて頷いたあとあの子から籠を受け取って、その中に入っていた果物を小皿の上で一つずつ握り潰した。

「ユニコッ!?」

 ユニコーンはショックを受けたように悲しそうな鳴き声を上げるが、これはお金を稼ぐために必要なことなのだ。
 絵が完成してからこの子のケアをしようと決めた私は、果実を丁寧にすり潰す。
 あとは泉からバケツで水を組んできて、色味の調整を行えばいいだけだ。
 再び画布に向き直った私は椅子に座り、一心不乱に筆を取る。
 下書きなど、必要なかった。
 限られた色を使って、今の気持ちを表現すれば――私の意志に関係なく、絵画は出来上がる。

「ニコ……ッ。ユニコ……ッ!」

 ぶどうの紫は、将来の不安を感じさせる深海の色。
 マンゴーのオレンジは、水面に映り込む夕焼けを。
 ザクロの赤は、水底で蠢くタコをイメージして。
 飲まず食わずで一心不乱に、真っ白な画布に絵を描き終えた私は――。

「君は……」

 見知らぬ男性の低い声が後方で聞こえた瞬間、ようやく意識を現実に引き戻した。
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