転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「あ、の……。お待たせして、申し訳ありませんでした。今、お時間。ありますか……?」

 彼は大きく頷くと、あたりを見渡した。
 大事な話をするなら、廊下ではないほうがいいだろうと判断したのだろう。
 でも、私は……。
 場所なんか、どうでもよかった。

 移動している間不安になって、せっかくユニコーンがくれた勇気がなくなってしまうのだけは、避けたかったから……。

「ここで、聞いてほしいの」

 私から触れることなど、今まで一度もなかったからだろう。
 思い切ってディルクさんの手首を掴んで止めれば、彼は大きく目を見開く。

「誰かを好きになるなんて、考えられなかった」

 彼を驚かせたことに罪悪感をいだきながら――私はずっと、彼に伝えられなかった本心を吐露する。

「私に好意を持ってくれる人なんて、現れるはずがないと……。そう思い込んでいたの。だからディルクさんが結婚に乗り気だと知り、驚いてしまって……。素直に、あなたを受け入れられなかった……」
「シエル……」
「この世界において、結婚は家と家を繋ぐ手段。私に拒否権なんて、なかったのに……」
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