転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「俺だけが、シエルの笑顔を引き出せるようになりたい」

 ディルクさんは私が心の内に秘めていた願望を口にすると、己に対する独占欲を滲ませる。
 なんの取り柄もなくて、聖女として不出来の私は誰にも知られず、1人寂しく死に至るのだとばかり思っていたのに……。

「君が俺の許婚として任命されたのは、運命だと思っている。このまま縁を断ち切るなど、あり得ない。俺は、シエルがほしい」

 彼はどれほど拒絶しても、何度だって私に手を差し伸べてくれた。
 妹ではなく、自分だけを見続けている。
 こんな稀有な人は、世界中のどこを探したって彼しかいないだろう。

 ――ディルクさんは私にとって、特別な人だ。
 絶対妹になんか、奪われたくない。

 でも……。

 あの子が真実を知れば、きっと、今まで以上にノエルは彼を求めるだろう。
 ディルクさんは、王弟なのだから……。

『シエルなんかよりも、あたしのほうが妻に相応しいでしょ!?』

 妹の言いそうなことを考えるだけでも、嫌になる。
 私はあの子のことが、大嫌いだ。
 二度と関わりたくなかった。
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